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蕁麻の家

著者の訃報を知りました。つい先日、萩原葉子著「蕁麻の家」を読んだばかりでした。
ご冥福をお祈りいたします。
萩原葉子氏は、有名な詩人、萩原朔太郎氏の娘さんです。
娘だともてはやされがちなのを嫌って、「実はこんなにひどい幼年時代をおくったのだ。」
自伝のようなこの小説を書いたらしいです。

小説の第1章では、戦前の日本のあでやかな暮らしぶりが書かれていて、興味深いです。


・・・若造りの好きな麗子は総絞りに金糸の刺繍の入った別誂えの中振袖に、丸帯を生娘のように胸高々と締める。勝は金糸の手縫い刺繍の帯を、力いっぱいに麗子の背中に結びあげる。・・・(中略)・・・菊の刺繍の細かく手の込んだ半襟を多めに出した胸元に、本絹の総絞りの贅沢な帯揚げを、これも多めに帯にかけ、絵羽を着た母親に連れ添われて歩くと、華族のお姫様のようだと私は思うのだった。


勝手に引用。麗子さんは(主人公のおばさんにあたります)歌舞伎に出かけていくのです。
ほふぅぅ~~~とため息が出ちゃうでしょう?
ちなみにこの麗子さんは30歳過ぎの出戻り娘です。

しかし!お話は、こんな日本情緒いっぱいに終始しているのではありません。
主人公(著者)の、母親は男と駆け落ちし、父親は(朔太郎さん)は「詩の世界」を漂ってばかりで現実感乏しい人物で、子育てにまるで興味なし。
おばあちゃん(勝さん)からは、「単なる居候」と呼ばれ冷遇&虐待される。
食事も残り物しか与えられず、洗濯物も金たらいでの(おばあちゃんたちは木のたらい)
別洗いを要求される。女学校の制服も1枚しか用意してくれず、汚れ気味・・・・・
とある事件から知り合ったギャンブラーの怪しいおじさんと付き合うことになり、(愛を求めていたのね)やがて妊娠、死産。
挙句の果ては、他の親族の陰謀で勘当させられつつある。(彼女が遺産相続人だから)
病気で死に瀕している(そのころの文学者って体弱かったよね)父の周りで、骨肉の争いが繰り広げられる。

壮絶なんです。ぐったり疲れてしまいます。この作品を含めて、3部作になっているらしいです。その後が書かれているのです。
怖いもの読みたさでしょうか。読んでみたいですねぇ

蕁麻の家・・・いらくさのいえ・・と読みます。「じんま」かと思いました。
事実「蕁麻疹」と入力してこの字を変換させます。(笑)
by harumisan | 2005-07-07 13:41 | 映画・book・art

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by harumisan